園長先生 1月たより「絵本の旅」
新しい年、穏やかに新年を迎えられましたでしょうか。
年末のある日、図書館に行きました。子どもフロアには2組の親子がいて、それぞれのお父さんやお母さんが幼稚園ぐらいの子どもを膝に乗せ、絵本を読んでいました。外はあわただしく時が流れているのに、そこだけ時が止まったかのようにゆったりと時間が流れ、心が柔らかい気持ちになりました。1人の子どもは読み終わると、もう1回、もう1回、と言って何度も同じ絵本を読んでもらおうとせがんでいます。お父さんは言われるままに、何度も何度も繰り返し読んであげていました。子どもは大好きな絵本と巡り合うと何度もその世界に旅立ち、浸りたいと繰り返し読んでもらうことをせがみます。大人は、ついたくさんの絵本と触れ合わせようと思い、もう読んだでしょうとか違う絵本にしたらとか言って別のものを選ばせようとします。でも子どもは大好きなお父さんやお母さんの声で同じ絵本を繰り返し読んで欲しいと願っているのです。
子どもの言葉の力は、聞く、話す、読む、書くという順で発達します。字を「読む」ことはまだ未熟で、字を追うことに一生懸命になってしまうため、物語の中に入っていくことは難しいと考えられています。ですから読み聞かせることはとても大切で、大人に絵本を読んでもらい、それを「聞く」ことで絵本の世界に入っていくことができ、言葉が豊かになって、考えや学びが深まっていくのです。好きな絵本は覚えるほどに何度も繰り返し読むことで、どんどん言葉が蓄積されます。同時に身体を触れ合いながら読んでもらった経験は、幼児期に自分が大切にされ愛された経験として記憶に残っていくのです。一冊の本からなんと素敵な言葉と心の旅が始まるのでしょう。
さあ、新しい年も、たくさんの絵本の旅に出かけていきましょう! 園長 髙瀬眞理子